自分で散骨しました


散骨を決めた理由

 私は現在59歳。3代目の長男です。4代目となる息子は、すでに都会で仕事をしているので、田舎に帰ってくることはありません。お墓があるのは由緒あるお寺さんですが、檀家としてお墓の管理が大変になってきました。お盆と暮れのお布施、毎月の墓参り、命日の墓参りにかかる花代。あと何年か後に年金生活者となる我が身には、これらの費用は馬鹿にできません。私ども夫婦が亡くなった時、都会にいる息子に、その負担を掛けたくない、というのが本音。いずれは、墓じまいをします。まずその前に、祖父と祖母を自分の手で散骨しようと決めました。

 

遺骨引渡しの手続き

 遺骨が納められているお墓の場所は、お寺さんの所有地です。遺骨をお墓から取り出すには、土地の所有者であるお寺さんの許可が必要。市役所にある所定の遺骨引渡証明書に記入し、墓地管理者であるお寺さんに署名捺印をもらいました。これで遺骨を取り出すことができます。

 

 

お墓から遺骨を取り出す

 お墓に納められている祖父、祖母、父の遺骨のうち、祖父と祖母をお墓から出すことに。祖父は私が生れる三か月前に亡くなっているので、既にお骨は50年以上を経過。仲の良かった祖母の遺骨も一緒に弔おうと思います。お坊さんが供養の経を唱え終わると、石材屋さんが手慣れた手つきでお墓を開けます。お墓の内部(カロウト)は、暗くて狭い空間。湿気を含んだ砂地の上に骨壺が3つ置かれています。奥にある祖父と祖母の骨壺を取り出しました。骨壺の蓋を開ける時の気持ちは複雑です。祖父の遺骨は、溢れんばかりに骨壺に入れられており、縁まで水が溜まっていました。昔の火葬は、現在のように高温処理できるものではなかったため、木炭などの燃料ゆえに、遺骨と炭が混ざっています。「長い間、骨壺に納められた遺骨は水になる」と聞いたことがありますが、それは全くの嘘だということがわかりました。30年ほど経過した祖母の遺骨の納められた骨壺は水気させも感じません。

 

遺骨と向き合う

 祖父の遺骨、祖母の遺骨、それぞれをバットに移します。祖父の遺骨は墨にまみれているので、遺骨と墨の分別作業から。更に、水に浸かっていたので乾燥させる必要があります。カロウトの中で、同じ素材の陶器製骨壺ながら、約60年経過した祖父の骨壺に水が溜まり、約30年経過した祖母の骨壺は乾燥状態を保っていました。骨壺に水が溜まる理由を考えてみました。火葬の焼成温度が低かった時代は、お骨が完全に火が通っておらず、半生状態ゆえに骨壺の中でゆっくりと腐敗し、微生物の呼吸作用により結露を生むのではないかと思います。水分を含んだ祖父の遺骨からは、臭いが発せら、そのまま放っておくとカビが発生してしまいます。祖母の遺骨は、墨にまみれた祖父の遺骨に比べると、とてもきれいで、真っ白な中に鮮やかなピンク、グリーン、グレイの色がところどころに見られます。お骨の中に混じっている棺に使われた釘、ホチキスの針、守り刀等の金属片を丁寧にピンセットで取り除きました。

 

大いなる海へ弔う

 それぞれの遺骨を水溶性の紙袋に納め、献花、献酒を積んで出航。富士山を眺める駿河湾のほぼ中央部にて散骨しました。海へ散骨することには、いろいろなご意見あると思います。中国ハルピンに渡り満州鉄道で働いた祖父、祖父の帰りを待ちわびながら海員学校で働いた祖母。海は二人にとっても想いがつのる場所。狭くて暗いカロウトの中よりも、祖父と祖母の居る場所は、光溢れる広い自然の中が相応しい。合掌。